セイシンカ

ウチュウジンの来訪

彼の世界に入ると、地球人の言語は理解出来ない。そもそも、言語というもの自体存在しない。ただ口をパクパクさせているだけで、地球人同士コンタクトがとれるようだ。全く音声のない世界なので、テレパシーで会話しているとしか思えない。無音の世界なので、...
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第2ウチュウジン

徳畑君24歳。浅黒く陽に焼けた風貌で筋肉質な好青年である。頭も良くすばしっこい。スタッフのすきをついてはよくエスケープを繰り返していた。彼には、いつからか私が宇宙人に見えるらしい。いつも私を指さして、笑いながら奇声をあげる。何を言っているの...
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保護・収容

やがて夜は更けて店の灯りがポツン、ポツンと消えていく。人通りがなくなる。午前零時を回ったころ、定期的に公衆電話で本部と連絡を取っていた先輩が、「自宅近くの喫茶店にいるらしい」との情報を持って来た。すぐに向かう。現場まで10分だ。喫茶店に着く...
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危険度レベルⅤ

「危険度レベルⅤとはどの程度なんですか?」組になった先輩に聞く。「いちばん上のレベルらしい。俺もまだ3年目だから経験ないな」「でも見つけなくちゃな。地域住民に危害を加える前にな」これはまずい。めちゃくちゃ正義感の強い先輩と組まされてしまった...
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非常招集

非常招集がかかった。病棟に緊張が走る。週休、年休おかまいなしに全員が招集される。明けのスタッフは仮眠後、病棟に出勤するよう指示が出される。措置入院したばかりの男性患者のエスケイプ(逃亡)だ。夕食のコンテナを運び入れる際、女子スタッフを押しの...
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食べられたヤギ

毎年秋になると5匹いたヤギがなぜか4匹に減る。収容者の一人がそれに気づいていた。彼は60代前半の男で15年近く入院している。そして朝、昼、夕と必ずヤギ小屋まで行き、何匹いるか声に出して数えているのだ。15年間一日も欠かさずに。そして毎年、病...
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カマ暴露療法

カマを手渡す時に、表情に変化がないかを確認して渡す。そして過去と同じ過ちを繰り返さぬように、声に出して確認する。「きょうはヤギの草を刈りに来ています。このカマは、今日は草を刈るもので、人の首を刈るものではありません」しもうた。間違えた。「今...
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ヤギの草刈り

精神科閉鎖病棟では、二度と人を殺めることのないようにと、命の尊さを教えている。生き物を育てながら、毎日世話をすることで、愛情を持たせて命の尊さを学ばせるのである。そのためヤギを5匹飼育している。まだ秋ではないので、5匹全部残っている。人を殺...
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座敷牢からの救出

それは、はなれの土蔵だった。窓はすべてに鉄格子が打ち付けられており、出入り口の扉の小窓だけが開いていた。扉には外から大きな鍵が、ぶら下がっている。何歳から入れられていたのか、さだかではない。救出した時、千里は26歳。青白い痩せた青年だった。...
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トリアージ

精神科研修医は1年の研修を終えて大学へ帰って行った。風のうわさによると大学を辞めて、姉と結婚したという。あとから来た後任の指導監督医が教えてくれた。誰にも知られていない遠くの街に引っ越すとのこと。研修医が大学に戻るのと時を同じくして、姉はも...