プール漬け年金生活者の朝は早い。雨が降ろうと、台風だろうと、津波だろうと気にしない。施設がオープンするならやって来る。いやオープンするものと信じて疑わない。確かめもしないで。とは言っても、オープン前は電話がつながらないから、確かめようもないのだけれど。
そして1時間前から続々とスポーツクラブに現れる。09:00ロッカールームへの入室が許可される。一気になだれ込むかと思いきや、そこが違う。年功序列というか、そこはコミュニティ。まず長(おさ)が先頭だ。安全を確認する。そして自由なはずのロッカーだが、場所が暗黙のうちに決められている。
定年後20年以上、毎日通っているプール漬け年金生活者は多数在籍。長寿大国日本が見える。ゆっくりとジャグジーで体を温めたあと、プールへと入水する。そしてただ、ただ泳ぐ。そしてただ、ただ列をなして水中を歩く。アリのごとく。いつでも、いつまでも歩き続けるのだ。これが、月2回の定休日以外は続く。
だから命尽きるまで泳ぐ、そして歩く。何のためか、どこに向かって歩くのか。誰も答えがわからない。だからプール漬け年金生活者なのだ。生き物の「さが」 なのだ。ゲージに入れたハムスターは、本能的にハムスターホイールを回し続ける。体力がなくなり、命尽きるまで回し続ける。なんか、それに似ている。
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