ある日の昼前。路地から出て来た軽トラがありました。次の信号で後ろに追いつきました。見るとヤギさんが二人乗っています。もちろん荷台にです。ゲージに入れられて、頸にロープがまかれ棒につながれています。軽トラがゆれると、ヤギさんもそろって二人ではねます。
そうです。二人はとっても仲がよかったのです。生まれたときから、ずうっといっしょでした。また次の信号で後ろにつきました。二人はこちらの視線に気づいて、そろって顔を向けました。やっぱり二人は仲がいいのです。すこし赤らんだ顔で、耳が垂れています。やせてはいません。
信号が青になり軽トラは走り出しました。だれが運転しているのでしょう。やはり八木さんでしょうか? よく見えません。ただ運転席の窓から、日に焼けたひじがはみだしています。やがて交差点を左折して国道に出ました。それでも軽トラはゆっくり走ります。
あんまりゆれないように、ヤギさんを気づかっているのです。優しい運転手さんですね。近づくと、ヤギさんが二人で何かを話していました。「これからどこへいくのかね…」と、言っているように見えました。それとも「さいごまでいっしょだね。」かもしれません。私はスピードを落として車間距離を大きくあけました。
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