ちんちん電車が走る街

コキョウ

クスリ漬け年金生活者が生まれた街には、かつてちんちん電車が走っていた。筑摩電気鉄道が駅から温泉までの5.3㎞を走らせていたのだ。都会からの登山客の多いこの街。新宿から夜行の準急「穂高」が満席で到着する。終着駅だ。さらに、ここを起点として北アルプス立山方面へと乗り継ぐのだ。

登山客が向かうのとは、反対方向。東側に路線は延びる。のある方角だ。肌色の車体に赤と青の横じま模様の特徴あるボンネットバス。そう松本電鉄のバスだ。この間をぬって、ちんちん電車は走る。大きな鈴を「ちんちん」と大きな音で響かせながら行く。

木造車両の「デハ10」は架線からは直流750V電気をもらい今日も元気だ。始発から終点まで18駅、所要時間は18分。駅から日中はほぼ10分間隔で発車する。だから、毎日乗るのが日課だった。ただ乗ることが目的だった。終点まで行き到着すると、温泉には入らずに駅舎ですぐに登りの車両に乗り移る。

大人一人につきこどもは一人まで料金無料。乗客は全員が子連れというわけではないから、原則無料ということ。クスリ漬け年金生活者故祖母によく連れて行ってもらっていた。大好きだった。しかし悲しいことに廃線をまじかに見るはめとなった。「ありがとう」という横断幕を掲げて走る車体がまだ目に焼き付いている。1960年代は、日本中が私鉄廃線の波に揺れた。

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