溶けて行く海馬を止めるクスリも、広く処方されている。アリセプト(ドネペジル塩酸塩)はすでに10年以上も前に開発されていた。主にアルツハイマー型認知症の治療に使われる薬で、認知機能の改善・進行抑制を目的としている。その作用機序は、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の働きを抑制することにある。
アセチルコリンは記憶や学習に深く関わる神経伝達物質で、その減少が認知機能低下の大きな原因の一つとされている。実際、アルツハイマー型認知症の脳では、アセチルコリンの量が減少してしまっている。このアセチルコリンは主にアセチルコリンエステラーゼの働きによって分解される。
アリセプトは選択的かつ可逆的な、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬である。その結果、シナプス間隙におけるアセチルコリンの分解を遅らせ、濃度を上げることが出来る。シナプス間隙に残るアセチルコリンが増えることで、神経細胞間の信号伝達(ニコチン性・ムスカリン性)が強化され、脳内コリン作動性神経系を賦活する。
この作用機序により、認知機能を改善、または進行を遅らせることが期待出来るのである。ただ副作用の報告もある。食欲不振、吐き気、下痢。不眠など。これらは、93歳の後期高齢者にとっては重大な副作用にもなりえる。サルコペニアやフレイルに直結するからだ。より慎重な対応が求められる。
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