移動開始は14:00。さすが昭和の荒波をくぐり抜けて来た大先輩たち。時間の狂いは1分たりともない。ツアー客には持って来いだ。しかしこの特性があとで裏目に出るとは。かわりに相手に1分の遅れも許さないからだ。添乗員が3名それぞれ9時の方角、12時の方角、3時の方角で色の違う旅行社のロゴが印刷された旗(のろし)を空高く掲げる。
皆胸に付けている記章と同じ色の旗の下に集まる。大声で点呼が始まる。皆難聴だからだ。添乗員が名前を叫ぶ。該当者は一歩前進し大きな声で「ハイ!」と敬礼する。さすが帝国陸軍の癖が染みついている。この日はこの旅行社だけでも、3コースの北海道ツアーが企画されていたのだ。
しかしこの見事な整列。しかも隊列を崩さない。それぞれ準備された車両めがけて行進が始まった。くつ音が空港内に響く。圧巻だった。外国人観光客はすぐさま写真に収めていた。乗車口で座席手形をそれぞれに手渡される。バスの座席は公平に日ごとに替えられるのだ。なくさないように乗る直前に渡すのだ。
各自に手渡すことにより、時間を稼ぎ、バスのステップの乗車に間隔を設けることが出来る。ステップで転倒でもされたら大惨事だ。さらにABCDという英文字は使わない。進行方向に向かい左手からイロハニと書いてある。「○○様〇列イ」という感じだ。敵国文字は使わない。そこまで昭和時代のツアー客に配慮している。素晴らしい旅行社だ。すぐさま好きになってしもうた。
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