フォルクスワーゲン ビートル

コキョウ

園には今でこそ珍しくはないが、昭和初期人力車闊歩していた時代に、エンジン付きの車で送り迎えしている家庭があった。現金(かね)持ちの百瀬さんだ。肌色のフォルクスワーゲン・ビートルだった。なんとドイツ産の外車ではないか。パッパ裁判所に勤めているという噂だった。

市内には昭和石油ガソリンスタンドが4か所しかなかったから、その貴重さがわかるだろう。無人スタンドが今では当たり前だったが、昭和の時代にはすべてが有人スタンドだった。ガソリン1リットル41円が相場だったが、バスの運賃が市内線どこでも10円の時代だ。いかに贅沢だったかがわかる。

そんな時代、一般庶民は乗れても、人力車バイクくらいだった。カゴはもう見かけなくなっていた。そうだ、あけみちゃんパッパメグロは国産ながらも最高機種だったのだ。百瀬さんのお宅では子どもが誘拐されないようにと、ビートル送迎していたようだ。

この年には「よしのぶちゃん身代金誘拐殺人事件」が起きており、日本中が震撼していたのだ。無理もない。現金(かね)持ちならなおさらだ。よしのぶちゃん事件では身代金50万円を母親が渡している。まんまと持ち逃げされてしもうた。だが今思うと、外車で送り迎えする方が、人目についてかえって狙われるのでは?

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