そのなかでも、今日に受け継がれているものがある。それは、弱った心臓をブタの神聖な心臓と入れ替えるという儀式である。琉球では、昔からユタやノロあるいはツカサと呼ばれる、琉球独自のシャーマンが取り行って来た。しかし、今日では正式に医学で認められて実用化され、保険適応にもなっているから驚きだ。
日本全国の病院で行われているAVR(大動脈弁置換術)のブタ生体弁移植だ。生きているブタの心臓の一部をヒトに移植するのだ。古代から琉球で行われて来たとはいえ、医学が発達した現代に実用化するとは画期的だ。そしてブタの生体弁はヒトの体内で生き続け、心臓を動かし、全身に血液を送り出すのである。
ブタの生体弁は器械弁と比べて優れていることが多い。血栓が出来にくいため、抗凝固剤を一生飲み続ける必要がないのだ。抗凝固剤を飲み続けると、脳出血や消化管出血の危険が増大する。また、Dissectionや食道静脈瘤破裂の恐れもある。小さな傷や抜歯でも、出血が止まらず大惨事にもなり兼ねない。
ただ、20年、30年という長期的スパンで見ると課題も残る。ブタの心臓を移植したヒトは、長い年月の果てにブタに近づくのだ。移植後3~5年もすると、例外なく少しずつ太り出す。そしてポッチャリとした体形となる。そして、あろうことか、寝言で無意識に「グビグビ、ブーブー」と言うようになるのだ。
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