遠足の日が来た。おやつは50円以内でそろえるよう学校から通達があった。前日に友だちと駄菓子屋に買いに行く。どれを選ぶか迷う。水筒にはマッマに頼んで、砂糖入りの甘い麦茶が常だった。のどかな時代である。牛飼君もやって来た。いつものように補助輪付きの自転車だ。
でも今日は違う。牛飼君のマッマも一緒だ。なんかクラスに担任が二人いるような感じになった。リュックを背負い、水筒を肩にかけて、帽子をかぶり隊列を組んで教師の号令で進む。しかも名簿順に順番が決められている。今思うと、江戸時代の大名行列か。
令和で例えると、北朝鮮の兵隊の行進さながらだった。交差点では担当の教師が、先回りして交通整理を行う。信号なんてめったにないから、手旗信号だ。6クラス総勢250名を超える、平日、公道での行進はさぞ交通の迷惑になったことだろう。しかし、だれも文句を言う市民はいなかった。
そればかりか、手を振る人もいた。現代では考えられない。幼稚園でも作ろうと計画が上ったとたん、付近の住民が「うるさくなるから計画は撤回しろ」と大騒ぎとなる。いつからこのような殺伐とした世の中に代わってしまったのか。本当に嘆かわしい時代である。
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