六号坂のアヒルたち 3

シゴト

彼らアヒルたちは、上京生活の3~4年間をこうして過ごす。すべて先輩から受け継がれて来たアヒルアルゴリズムに従う。住みかは、フロなし、トイレ共同の6帖一間の安アパートだ。それにかたちだけ蛇口がついているかんじかな。まるで「神田川」の世界そのものだった。夜会が終わると帰り道、駅近くの路地奥にある、一番安い露天商飯屋にならぶ。

冷え切った屋外のカウンター席7席。つねに満席で列が出来る。だが、「行列の出来るラーメン屋」とは行列の意味が異なる。¥250の日替わり定食を皆、目当てでならぶ。安くてうまい。しかも満腹になる。メニューを選ぶ必要もない。毎日違う料理だ。これが卒業時には、残念なことに¥270に値上がりしてしもうた。

昼はほっかほっか亭の「のり弁」が定番か。昔から安かった。それともスーパーで菓子パンで済ませるか。日曜は銭湯に行き、コインランドリーを回し、定食を食べて帰って来る。「焼肉定食」か「雑魚定食」と豪華版だった。そして何もなかったように一週間が終わる。あっという間だ。

月末新宿のディスコフィーバーか?YMCAが流れると、みんなで飛び上って喜んだ。盛り上がった。巷ではピンクレディーUFOが大ヒット。喫茶店ではインベーダーゲームが流行り、歌舞伎町にはインベーダー大学までがオープンした。「リトルマーメイド」はまだあるのか。

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