四つ足歩行のススメ 2

セイカツ

やがてカメ子おばぁは、律子の必死の介護とたゆまぬリハビリのおかげで、半年後には2WDまで回復した。痛み止めを飲み続けたせいで、胃に穴が開き、一時は20㎏も体重が落ちた。頬はこけ、手足は痩せて、血管が浮き出て、体重も80キロを切ってしまう日々が続いた。じゃあ、もともとは何キロあったのか。

貞子ではない。しかし、結果的には幸か不幸か、体重が減ったせいで2WDに乗れるようになったのだ。動力源を使わずに、自力で2WD移動が出来るようになったカメ子おばぁは言う。後悔している口癖だ。「あの時、台所二足歩行していなければよかった。四つ足歩行さえしていれば、こんなことにならなかったのに。」

そのとおりである。四つ足歩行さえしていれば、決して転倒などしなかったはずだ。四つん這いで料理を作ってさえいれば、脊髄損傷になどならなかったのだ。「後悔先に立たず」である。この言葉は、「先に立っていると、あとで後悔することになるよ」というモーゼの十戒である。

最近では、デイケアー施設老人会の講習で、「四つ足歩行のススメ」が流行りである。「転倒による骨折、寝たきりゼロ」という厚生労働省のススメによるものだ。近い将来、交差点の歩行者用信号が青になると、四方八方から、ご老人が、素早く、蜘蛛のように四つ足歩行で渡り出す時代が来るだろう。これを「蜘蛛の巣作戦」と呼ぶ。

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