寄宿舎生活と年金生活者

シゴト

タクシーは案内に書いてある通りに8分でやって来た。行き先は言う前から知っていた。私の名前も知っていた。顔認証システムのようだ。しかし私の顔面情報はどこから漏れたのか。さては出入りしている、あのお人好しのプロパーの仕業か。大事な第1級個人情報の漏洩ではないか。

その寄宿舎は、茶畑から山に入った人里はなれた林の中にポツンとあった。付近にはコンビニはおろか建物が一切ない。街灯すらない。道も舗装されていない。もちろん人などいない。タクシーも途中で降ろされ、あとは歩かされた。この場所は、あのタクシー会社しかわからないという。なんという厳重なセキュリティーだろうか。

研修当日朝、社のバスが近くまで迎えに来た。研修参加者を全員乗せた後、茶畑をいくつも越えて山中へ奥深く入って行った。およそ30分も走ったころ、突然視界が広がり本社工場のゲートが見えてきた。警備員が両サイドに2名もいる。なんという厳重さだろうか。だが米軍基地と異なり銃は持っていない。

「確認がまだ整っていない」とのことで3分ほど待たされた。やがて本社から電話が入り、無事に検問を通過することが出来た。施設内ではまず保安検査を行い、その後研修プログラムが始まった。本社工場の一角で研修が行われるのであるが、同じ敷地内では世界に先駆けて開発中の機種など高度な秘密も扱っていた。

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