しかし現実はハブの心配だ。夜行性だからそろそろ起きるころだ。ヤツは赤外線の熱センサーを持っているから、私の熱源を察知して近づいて来るかもしれない。ここで咬まれてしまっては、助かる命も助からない。病院に行くどころか、人に助けを求める手段もない。ゴソゴソと音がすると、飛び起きてライトで茂みを照らす。ハブではなかった。大型のヤドカリが動いていた。「あと1日後には、ヤドカリは私の貴重なタンパク源になるんだ」イヤな予感がフッと脳裏をかすめた。
それにしても口の中がネバネバして来た。脱水症が進行している症状だ。ここで急性腎不全や脳梗塞でも起こしたら、元も子もない。思い切って残りわずかなソルティライチを、一口分だけ残してほぼ全量を飲んでしまった。もう水はない。深刻にならざるを得なかった。
そうだ! 私は飛び起きて闇夜をライトで照らし、ビーチにころがっている栓付きのペットボトルを見つけ、海水で中を洗って来た。これから出る自分の尿も貴重な水分として貯めようと思ったのだ。尿中の水分は再利用出来るし、自分の尿を飲む民間療法もあるくらいだ。背に腹は代えられない。海水を飲むよりは、ましである。
こうして予期しなかったサバイバル1日目が暮れた。というか、開幕してしまったのだ。尿は2回あり全てペットボトルに貯めたが、300ml程度だった。以降、尿は全く出なかった。脱水症が確実に進行していた。
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