MRT淡水信義線の劔潭駅から少し北西に歩くとそれがある。士林観光夜市である。迷路のような狭い路地に屋台がびっしりとならび、人々がごった返している。食べ物屋からは調理する臭いと香辛料、けむりが漂う。いくつもの店からいくつもの臭いが混ざり合う。大きな中華鍋からは湯気と熱気が立ち上り、ファンからは熱風が吹き出し、10月でも汗が噴き出るほど暑い。
傍らでは、金魚すくいや輪投げゲームにスロットマシーンなどの夜店にも人だかりが出来ている。バッグやカバンなどの雑貨も、ところ狭しと並べられている。店員は日本人と瓜二つ。ここも昭和の日本を思い出させてくれる懐かしい風景だ。このような夜市が発展したのは、台湾では毎食が外食という習慣かららしい。家庭では料理はしないという。キッチンは飾り物らしい。日本人からは考えられない。
三食外食ではさぞ健康に悪いと思ったのだが、平均寿命を調べてみると日本と大差ない。外食は塩分過剰で中性脂肪やカロリーもオーバーするはずでは? つじつまが合わない。もしかすると日本と違い、台湾ならではのお茶を飲む習慣が、これらを打ち消して健康寿命を保っているのか。それとも健康に良い秘密の食べ物でもあるのか。さだかではない。
暑いので、冷房の効いた半地下の美食区に入った。メニューを見るが、みな四文字熟語でわからない。写真も載っているが暗がりでみな同じに見える。だから店員が勧めるものを全て注文してみた。炒飯とルーロウファン、揚臭豆腐、炒空芯菜と。あとは何を食べたか覚えていない。雑踏の中、美味しかったのか、まずかったのか、味も覚えていない。記憶を消し去るタケノコでも食べさせられてしまったのか。今思い出しても不思議な美食区だった。
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