やはりクスリ漬け年金生活者は強かった。生活がかかっているからだ。獲物を逃がしたら最後、今度いつ獲物にありつけるかわからない。相手がウツボだろうとサメであろうと喰えれば構わない。相手に申し分ない。それにクスリ漬けだから、強力な抗不安薬のおかげでサメなど全く怖くない。何度も確実に急所をダイビングナイフで突き刺した。
30分もたっただろうか、サメは動かなくなった。私もどっと疲れた。重かったので魚体は水中を岸まで引っ張って行った。やっとのことで岸に引き上げてスピアを抜くと、なんとスピアがUの字に曲がり、スピアガンまでもが壊れて使いものにならない状態になっていた。なんという恐るべき力。重装備で良かった。私も全身を岩やサンゴ礁にぶつけて、傷だらけになっていた。
私をこんな目にあわせたヤツを放ってはおけない。意地でも喰ってやる。重すぎて持てず、四輪駆動車に付いているウインチで引っ張り上げた。ところがデカ過ぎてクーラーボックスになど入らない。そこで氷と一緒に袋詰めにした。これでどうだ。ベースキャンプまで持ち帰ったのだが、ここでまた問題が。家庭用冷凍庫に入らない。これでは急速冷凍出来ないではないか。
仕方なく、魚体を風呂場で解体して急速冷凍した。遺体を解体するよりは、はるかに楽だった。後日、YouTubeを参考にして調理した。刺身と唐揚げがあったのだが、一旦冷凍しているので唐揚げにしてみた。喰ってみると予想外に旨い。身が引き締まっていて、脂は少な目だった。それにしてもこんな危険な魚は最後にしたいものだ。
コメント