5月某日。ゴールデンウイーク翌週の平日、13:50。新千歳空港一階ロビーに突如として大集団が集結した。全員が若くない。というか前後期高齢者だ。クスリ漬け年金生活者の老夫婦一団なのだ。杖を突いた者、酸素ボンベを鼻につないだ者、シルバーカーにすがる者、CPAPマスクを顔面につないだ者、機内で熟睡していたのか? 皆様々だ。
さすがに大正生まれはいなかった。みんな昭和の生き残りだ。だから叩き込まれている。そうなのだ、何事も10分前行動を!あまりに早すぎては、相手に失礼だ。さすがに時間には正確無比だ。よく見ると皆、手の甲を何度も見直している。そこにはマジックで「14時」と、デカデカと書いてある。やはり認知症がはびこっているのだ。
日程表は字が12ドットなので老眼鏡を着けないと見えない。14時と確認してもトイレに行って帰って来ると、もう忘れる。紙に書けばいいと思うがそれがいけない。どこにしまったか忘れてしまう。というか紙に書いたこと自体覚えていないからたまらない。このありさまでは、旅行に行っても次の日には、もう記憶にないのではないか?
「それがいいのです」添乗員はこっそりと話してくれた。「年配の旅行者様は、旅行に行ったことをすぐに忘れるので、すぐまた旅行に申し込みます。同じコースを申し込むリピーターも多くいます」。どんなに満足しても全く同じコースは申し込まないと思うが。添乗員は続ける。「季節によってうつろいが違いますから…。お客様は神様です。特に年配の旅行者様は宝の山でございます」。
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