なんともメーカーとしては危険な駆け引きである。優秀な技術者を育てたいが、研修参加者の中に他のメーカーのスパイや、他国の工作員が紛れ込んでいる可能性もある。そこで研修開始前に厳格なルールが提示された。「許可された区域以外は絶対に入らないこと」「研修指導員以外の本社社員とは絶対に会話しないこと」
研修中は周囲に見張り役が立ち、研修者の行動を逐一監視している。このようなありえへん状況下での研修がスタートした。午前中は講義、午後からは小グループに分かれて、実際に器械をばらしての実技講習。ゴム・チップ・リング・インペラと細かい部品が多すぎる。順番を間違うと組立てられない。
グリスを塗っていい部分と、絶対に塗ってはいけない箇所がある。ビスもバランスをとって締めないと、回転時にインペラがこすれて音がする。さらに実際に組立てて動けばいいというだけの話ではない。今度は除水ポンプの精度の問題だ。1時間稼働させて、除水量の誤差が規定値以内に収まっているかどうか。
除水0の設定でも、実際除水してしまっていないかどうか。器械からの水漏れはないか。ハードな研修が続いた。研修が終わると社のバスで寄宿舎に帰るのだが、寄宿舎周辺には店も何もないので、わざわざバスは麓の町のコンビニにより待っていてくれる。自由な外出も禁止なのだ。
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