クスリ漬け年金生活者の祈り

プライベートビーチ

私はもう、「もし生きて帰れたら何をしようか、拾った命を何に使おうか」と、いい意味で前向きな考えにもっていくようにした。91歳の母親よりも早く死ぬなど、これほど親不孝はない。母親はクリスチャンであり、私が隔週で教会へ付き添っている。「神様どうか助けて下さい」と何度祈ったことか。「イエス様、波を静め無事に帰らせて下さい。私に力を与えて下さい」と。

私は怖くてなかなか時計が見れなかった。「まだこんな時間か」と落胆してしまうのが怖かったのだ。まだジェット音がする。まだ24:00を回ってはいないのか。あとでわかったことだが、24時以降であってもマニラやシンガポール便などの国際線は、たまに近くを飛んでいた。今思えば、多分その時のジェット音だったのだろう。

恐る恐る時計を見ると2:20だった。「やったー もうすぐ明るくなる 夜を越えられそうだ」私は少しうれしくなった。しかし、これはすぐに絶望へと変わる。やがて4:00の満潮時刻を過ぎても、波音が少しも遠ざからないのだ。静かにならない。昨日の夕方のような音に静まらない。やはり、波高が上がったのか。

やがて「ゴロー」「ゴロー」というヤマバトの鳴き声が聞こえて来た。あたりはうっすらと白みはじめた。いつもはベッドの中なのに、今日は砂の上か。それもアリ、ヤドカリ、ハブと一緒に。耳の中にアリが入った。取り出す。潰す。でも実際は暗くて見えないから、何を潰したかもわからない。そんなことは、もう気にもならなくなっていた。

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