だから職場復帰プログラムが必須なのである。絶望の淵から救うプロジェクトなのだ。焦りや絶望、孤独感が続くと、いくらクスリを飲んでも回復しない。周りからの専門的なサポート、支えが重要なカギとなるようだ。一筋縄ではいかない病気である。
吟醸君は、このプログラムにより徐々に回復して来たのだ。だからさっき挨拶に来たのだ。「明日から少しだけお世話になります。」やっと意味がわかったぞ。まだ全快とまでは程遠いのか。「快気祝い」も絶対にやってはいけないらしい。主治医が蒼くなることだろう。
そのうち社内で、「職場の精神衛生」という題目で講演会が開かれた。そこで職場復帰する人への対応も学んだ。何もなかったかのようにフツウに接すること。決して励ましてはいけない。かといって無視してもいけない。あたたかく迎えることという。
吟醸君は復帰後しばらく隔日勤務だった。最初は午前中で帰ったが、そのうち夕方までいるようになった。順調に復帰しているようだった。ただ主任という立場上、皆から孤立しがちだった。もし平のままだったら、気軽に皆から声をかけて、冗談を言い合えたのに。残念な立ち位置だった。
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