競い合った故名腰君 2

シゴト

しもうた。不意をつかれた。一番乗りをなんの断りもなしに奪われてしまったではないか。みじめだ。なんという屈辱の一日だ。こんなにプライドを傷つけられたら、仕事など手に着かない。すぐにその日は退社した。何かの間違いだろうと思い、次の日に出社すると、すでにいた。完全なる無言宣戦布告である。

次に日から仮眠もとらずに、06:50出社した。これで一番の座をなんとか取り戻せた。一週間安泰だった。ところが翌週からは、またすでにいた。故名腰君意識して、出社時間を早めているのは明らかだ。笑顔挨拶を交わすのだが、深層心理ではあざ笑っているのは確かである。

ここまで来て朝一番の座を譲るわけにはいかない。クスリ漬け年金生活者は、その意地プライドをかけて、朝食も摂らず、ひげも剃らずに06:30には出社するようにした。これで一か月安泰だった。しかし、悲劇は起こった。車から降りようとすると、その前をゆっくりと歩いている人がいる。故名腰君だった。

気づかれぬよう後を歩く。なぜそんなに張り合うのか。些細な事なのに、あほらしいと、故名腰君のことを呆れた。しかし、クスリ漬け年金生活者は、次の日から自宅発06:00に前倒しした。そして国道を高速なみの時速80㎞から時には100㎞で疾走するようになる。だれも見ていない信号機無視した。

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