ところが、である。信じられないことが起きたのだ。送別会までしたのに、何日たっても異動しないで、同じ部署に居座っているのである。「あの人とっくに別の部署に異動したはずでしょ? 送別会までして」と皆でささやきあった。でも面と向かって問いただす者はいなかった。
さては上司に多額の賄賂でも送ったのか。はたまた脅迫めいたことをして、異動辞令を捻じ曲げたのか。現実は違った。さすが相手もずる賢い。噂によると、故名腰君は詐病を使い、鬱病の診断書を、知り合いのクリニックで書いてもらったらしい。そして産業医に泣きついたのだ。
さらに「環境の急な変化は好ましくない」との主治医の意見書まで丁寧に付け加えた。そしてこの競い合いは、ついに予期せぬ結末を迎える。この事実を知った、クスリ漬け年金生活者は自暴自棄となった。社からの帰り道、アクセルを床に着くまで踏み込んだ。HVはエンジンとモーターで急加速する。メーターは100㎞に近い。
すぐにパトカーのサイレンが聞こえた。どこまでも赤色灯が追いかけて来る。逃げ切れなかった。一般道での30㎞速度超過にて赤切符。違反点数6点で即免許停止となった。後日裁判所へと出頭することとなる。反則金か懲役かを選ぶことになった。全く予期せぬ、あっけない結末だった。草。
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