その集団はまだ寒風吹きすさぶ極寒の地、色丹半島神威(カムイ)岬の公衆便所前に長蛇の列をなしていた。「ここのトイレは狭いですから、譲り合ってどうしてもという人だけにして下さい」全員難聴なのか、添乗員の声掛けにもだれも関知していない。ここは北海道最西端のトイレだ。だからここから先には、もうトイレがないのだ。
だから最後の砦(トイレ)となる。大型観光バスが到着するたびに、500m余の男女別の長い列が、この小さなトイレの前に出来る。神威岬への入場券売り場と間違えて我先にと並ぶ人も多い。だけどよく考えるとおかしい。「ここが北海道最西端のトイレで先がない」と言われても、ここから先は日本海で陸地がないからなくて当然ではないのか。
みな70過ぎのクスリ漬け年金生活者のツアー客だから、そこまで難しいことは理解出来ないようだ。しかも参加者全員が男性はBPH(前立腺肥大症)女性は過活動性膀胱でともに尿意切迫状態。2時間おきのトイレ休憩でもやっとだった。参加者の半数はパンパース(はくタイプ)を装着しているようだ。
そして無事にトイレが済んだ者だけ神威(カムイ)岬の観光が添乗員から許可される。なぜならバスの出発時間が迫っているからだ。今の国内ツアーでは今年から430休憩と同じくツアー業界では215休憩が義務づけられたみたいだ。トイレなしのバスでは2時間おきに15分のトイレ休憩をするという取り決めだ。初めて知った。
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