しかし思っていたよりも事態は深刻だった。そうだ水がないのだ。ソルティライチが500mlの1/3程度。これが今ある全水分だ。1時間以上も全力でジャングルをさまよったから、喉がカラカラである。しかも厚手のウエットスーツなので全身汗だくである。6月とはいっても暑い、暑い、どうしようか。
これもパニックにならないように冷静に対処しないといけない。命に直結した問題だからだ。人間は最長1週間くらいは何も食べなくても生きている。だが、水分となるとそうはいかない。水分を摂らなければ人間は脱水症となり1~2日で死ぬ。そのことは充分に知っていた。では「全力で水分管理だ!」
私は砂浜に落ちている、ヘルメットや長ぐつやペットボトルを拾い集めた。それを海水で洗い砂を落とした。そして上を向けて雨水が貯まるようにならべた。貯まるほどの雨は降ってはいなかったが、夜中に豪雨でもくれば救いとなる。脱水症が避けられるかもしれない。唯一の望みだった。
夜中は漁船も通ることはなく、海保に救助要請もしていないはずだから、海を見張っていても意味がない。無駄な体力を使うだけだ。私は寝場所を探すことにした。雨のかからない大きな木々の下の隙間を見つけ、リュックを枕にして横になった。というか、体力を使い切っていて、そうすることしか出来なかった。ダイビングキャップを二つに折り眼の上に置くと、真っ暗になり少し落ち着けた。
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