日本には、いくつかの極秘医療器械製造施設が各地に点在している。人目につかぬように都会を離れ、地方の山中にある。それは、情報が他国に漏れぬよう存在を極秘とし、有事の際には空爆や巡行ミサイルの標的にならぬようにするためだ。ひとつは静岡の深い山中にあった。あたり一面茶畑。
いくつもの防霜ファンが回り、逆転層の空気を地表に吹き付けている。まだ朝、夕は肌寒い。その茶畑をぬけて、深い山奥へと進んで行く。しばらく進むと谷間に、厳重にガードされた大きな建物が見えて来る。日本が世界に誇る特殊医療器械の研究・製造施設である。ヘリポートも完備している。
この分野では日本が世界最先端を行っている。なんせ中空糸の技術力が凄い。さらに逆浸透濾過圧をかける装置も凄い。糖尿病が進行すると、ついにはこの器械で命をつなぐこととなる。そもそもは、第二次世界大戦時に負傷兵を救うために開発された装置であり、歴史はまだ新しい。
その装置が今は、街中の開業医でも使えるようになったのだから、医療技術の進歩は凄まじい。だが、器械は操作・保守とも複雑で熟練した技術者を要する。いい加減な操作をすると、空気塞栓・溶血・敗血症など命にかかわる重大事故に直結する。だから器械を操作・保守点検できる熟練した技術者を育成する必要がある。
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