スーツケースが出て来ない

タビ

ところがである。成田空港のベルトコンベヤーからスーツケースが現れない。いつまで待っても出て来ない。ここまで来てLOST-BAGAGEか?それとも当局没収されたか。ところが、最期に申し分けなさそうに出て来た。案の定、傷だらけの痛ましい姿である。イジメにでもあったのか?

しかし、それは地球の裏側までの19000㎞を往復した雄姿であった。でもこのままでは、次の旅に使えない。ツアーコンダクターとともに、アエロメヒコ航空のカウンターに行った。破損証明がないと旅行保険が請求出来ないからだ。またところがだ。先客がいたのだ。どこかで見たことのある後ろ姿だ。

近づくと聞き覚えのある話し声が聞こえて来た。「ボクのスーツケースなんだけど、ボクのが取っ手がとれてしまってねえ…」 な、なんと、こともあろうにあの社長ではないか。を疑った。最期の最期まで張り合うつもりなのか。これには、参ってしまった。

社長の事務手続きが終わるまで待たされた。結局、社長がいつでも、なんでも先の運命のようだ。人を押しのけて先に行く「強運」を持っているのか。だが、待てよ。「それなら、旅立つのも社長が先か!」「三途の川も人を押しのけて、まっ先に渡るのか。」 クスリ漬け年金生活者は、一瞬心の中でほくそ笑んだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました