競い合った故名腰君 3

シゴト

そしてクスリ漬け年金生活者は、またも一番の座を勝ち取ったのである。うれしいことに、何ヶ月も安泰が続いた。故名腰君も力及ばぬと思い諦めたのだろう。プライド死守出来たことに満足だった。だが油断は出来ない。相手は隙あらばと、虎視眈々一番の座を狙っている。

その日を境にして、クスリ漬け年金生活者の日常が変わった。早朝から死闘カーレース参戦するのである。雨の日は特に危険極まりない。仕事は、なぜこんなに厳しくて辛いものなのか。毎日、早朝から食事もとらずに、命がけハンドルを握る。

なぜこうまでして、命がけで仕事に行かなければならないのか。すべての原因は、あの故名腰君にあるのだ。故名腰君さえいなければ、もとの生活に戻れるのに。日常生活を根本から変えられたことに、故名腰君に対して憎悪の念でいっぱいになっていった。

そして故名腰君が、自分の手を汚すことなく消えることを願った。故名腰君部署異動をひたすら待ったのである。待つこと1年半。ついにそれが現実のものとなった。こころからうれしかった。彼の送別会は特に盛大に行い、「本当に名残惜しい!」「よく今日まで頑張った!」などと心にもない嘘八百を並びたてた。

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