新井ブースカが昔、蟻ケ崎にやって来た。使用された機材はスバル360だ。なぜそう呼ばれていたのか、誰も知らない。いつしかそう呼ばれていた。当時、ドリフターズという笑劇団が活躍しており、そのメンバーに「なんだ、馬鹿野郎!」がキャッチフレーズの荒井注がいた。国民は「8時だよ。全員集合」に狂喜した。
荒井注はその言動から途中降板した。代替え要員として志村けんが入団したが、のちに若くしてコロナの犠牲となった。ところが新井ブースカの方は順調だった。やがてクリスマスも家族と一緒に過ごした。ケーキも一緒に食した。正月にもどこからかやって来た。ひげ爺の教え子という話だった。
そしてある日、一緒に暮らしていたお姉ちゃんを連れて帰った。これが目的だったのか。なにか魂胆があるとは疑っていたが… その時になって気づいた。学校は午後から、なぜか自分だけが休みだった。藤原先生がそうした。そして家族で縄手通りの神社に向かった。皆、民族衣装で着飾っていた。
結婚式という儀式だった。一族が顔を合わせる。両家の家紋を掲げる。笛と太鼓が鳴り響く荘厳な日本の儀式だった。いつものデモ行進の集会場が、今日は結婚式場と化したのだ。その後も時々遊びに来た。どこにアジトがあるのかと、スバル360を自転車で追いかけたことがある。そこは浅間温泉近くの横田だった。
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