NHKでは、今が解体ブームでもあるかのように、「解体の専門番組:解体キングダム」まで毎週放送している。何でもかんでも解体する時代である。もったいない限りだ。再利用やメルカリ出品は考えないのか。人間でさえ臓器提供でリサイクルする時代なのに。
そうこうする間に20年が去った。この20年間でこどもは成長し、出家していった。一緒に走り回った子犬も、やがて爺犬となり、虹の橋に行った。その間、こどもの癇癪でドアがゆがんだり、認知症が進行した母親に、たたみが汚染されたりもした。それを、この建物は傍でずうっと静かに見守って来たのだ。
クスリ漬け年金生活者も、やがて定年を迎え峠の隠遁生活に入った。歴史は経過した。だが歳をとったのは周りばかりではない。この建物自体も、20年間風雨にさらされ台風にも耐えて来た。風速70mも経験した。だからこそ、20年目メンテナンス工事が必要となって来るのである。解体ではない。
旧正月を終えた1月30日から、それははじまった。工期1ケ月半の大規模なメンテナンス工事となる。初日は大型トラック3台が集結し、鉄パイプを300本搬入。その日のうちに、鳶職6名が3階建ての足場を作ってしまった。現場監督がほかにいる。耐荷重量も計算しつくされている。電力会社も登場して、高所作業車で電線に保護パイプを取り付けた。その時、時は動いた。
コメント