そして10年もすると、どことなく顔つきがブタに似て来る。顔面が全体的に紅みを帯び、鼻だけが飛躍的に成長する。俗世間からは、まさに「プタピト」と称されている。しかし、これは仕方のないことなのだ。養鶏場のヒトが鶏顔になったり、牛を飼っているヒトが牛に似た顔つきになるのと、同じ法則らしい。
「飼い主はペットに似る」(2004年カリフォルニア大学の心理学者ミハエル・ロイらが提唱)という、まさにアレだ。いや、実際に体内に生きたブタの心臓が入っているから、それ以上かもしれない。ブタの心臓から拍出された血液や、さまざまなホルモン物質が全身隅々まで行き渡るのだ。
やがて、いつの間にか性格も変わりトンブタ思考となる。そして移植後30~40年もすると、ついにブタになってしまう。ブタ由来の細胞が、ヒト細胞と置き換わり全身を支配するようになる。皆、例外なく仙骨部の上端部から、15cm程度のしっぽが生えて、四足歩行となる。たぶん、年齢的には90歳を超えるころだから、仕方のないことだが。
この頃には、ヒトの脳細胞は認知症となり機能しない。代わって、ブタの本能が生命維持のために、脳を支配するようになる。会話も認知症で成立しなくなり、「ブヒブヒ、ブーブー」とブタ言語を発するようになる。こうして、心も体もブタになってしまうのだ。昨年のNatureでも、この件については報告されていた。
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