人間が最も幽体離脱しやすい高度は上空11582mで対地速度は時速1000kmであることが量子力学的にわかって来ている。その高度になんと要介護4で092歳が挑戦したのである。そして離脱後ロフテッド軌道で飛翔する距離は1687km 2時間30分を予定していた。要介護4で092歳とは、なんとクスリ漬け年金生活者の母体そのものであった。
それは6か月前からANAという巨大組織のもと入念に計画された。コードシェアネームは「Super-Value-55」である。そして2023年11月10日にガザの空爆と時を同じくして実行に移された。ハマスのテロを未然に防ぐため、車いすはすべて木製。クギや金具は一切使用せず、神社・仏閣を建造するように木材をはめ込み式にかみ合せて組み立ててある。これで高感度な金属探知機を使用出来るのだ。
幽体離脱に使用された機材はトリプルセブン300。機内のモニターには映画「翔んで埼玉」が流れている。そして予定されていた高度に近づく。気圧が下がる。母体に緊張が走る。そしてついに幽体離脱は達成された。気が付くと、離脱先はなんと映画の中だった。埼玉県大宮市北区である。なんとこんなことが起きるのか。映画の中に離脱してしまうとは。
そして幽体はそこで80年前の世界に入った。教師をしていた妹もいた。満州からの引揚げ船の狭い船内。海軍工廠のある呉の街並み。弟が呉で車にひかれたこと。古河に疎開したこと。食べるものがなくて、空の弁当箱を持って学校に行ったこと。父親が同性同名の別人と間違えられて、軍事裁判にかけられ巣鴨プリズンに収容されそうになったこと。幽体はしばらく時空のゆがみをさまよった。
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