路線バスも緊急停止。人々は外にほおり出された。空港は全面閉鎖。琉球に向かっていた便はあわてて引き返した。出発便は全便欠航。乗客や係員らはターミナルビルの3階以上に登った。管制塔によじ登る集団もいた。あたりは騒然として足の踏み場もない。
沿岸部や埋め立て地区の小学校や幼稚園では、みんな浮き輪をつけてビルの屋上に上がった。子供らの泣き叫ぶ声が聞こえる。頭の禿げた教頭が、屋上でゴムボートを膨らまし始めた。今日は快晴なので陽の光が頭に直接反射して眩しい。
津波到達予想時刻が刻々と近づく。津波の予想される高さはなんと30m。これにはみんな度肝を抜かれた。店はシャッターを閉め土嚢を積む。今からでも間に合うのか。公園や植物園では、人々は皆木に登りはじめた。ヤシの木は枝がないので登るには1級の腕前がいる。
港湾内の船舶は全て沖に出た。しかし元県警本部長とその仲間たちは、いつものプールで、悠然と水中ウォーキングに勤しんでいた。沖縄戦を生き抜いた彼らには、もう人生で怖いものはないのだ。何事にも動じない。だから人生最期の時まで、自分の時間を自分なりに有意義に過ごしていたのだ。
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