空港から一行を乗せたバスは郊外にあるテオティワカンを目指す。テオティワカンと言えばメキシコを代表する、エジプトのピラミッドにも匹敵する世界遺産である。なんせ、この太陽のピラミッドは世界で3番目の大きさを誇る。テオティワカン(神々の集う場所)に我々も集うことになった。
現地に到着だ。現地ガイドによると90分ほど歩くという。徹夜での90分の行軍はきつい。誰もがそう思ったが、この遺跡目当てにツアーに参加したという老婦人だけは眼が輝いていた。単身参加だ。関西の大学教授か?奈良在住と言っていた。足がフラフラしながら、「暑い、暑い」といつも笑っていた。
列の最後尾は、いつもこのおばあちゃん教授か、足をひきずった主役だった。主役はバニラ製造会社をリタイヤしたらしい。遺跡周辺には石段や段差が至る所にある。まず石段を登り切ったところで、おばあちゃん教授が転倒した。はでにひっくり返り、ガイドもツアーコンダクターも驚嘆した。
次に石段を下る際に主役のバニラ爺が滑落してしもうた。手すりさえ整備されていないのだ。しばらくうずくまって動かなかった。小雨もパラついて来た。「もうさんざんだ」と叫んでいた。「これは初心者向きのツアーではないですね」となりの金型工場の社長(42歳)がポツリと言った。最後は、皮肉にも「死者の大通り」をみんなで足を引きづりながら歩いた。まだ死んでないぞ!
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