はつり工業と年金生活者

シゴト

クスリ漬け年金生活者は、はつり工業ANONにも在籍していた。作業現場は、おもに西新宿中心であったが、その活動範囲は広く中野のナーシングホーム明治屋、遠くは中央シャープ大森リコー工場まで及んだ。新宿本社に出社後、6~7名のグループで割り当てられた現場に向かう。現場までの交通費は支給されるのだが、リーダーは入社以来すべてを、キセル乗車でしのいでいるというのでびっくりした。あとで手順を詳しくオリエンテーションしてくれた

中野の新築ナーシングホームでの作業は真冬にあたり寒かった。室内での作業となるが、暖房など一切ない。昼食時に飲む自動販売機のUCCのホットコーヒーのみが暖となった。ここは最先端な施設で、寝たきりの老人を浴槽に入れるためのグリーンの電動式クレーンが浴室内に設置されており、当時では珍しかった。その床をていねいにピカピカになるまではつり、よく滑るようにした。

明治屋は夜間の突貫作業となった。店の営業が終了して交通量が少なくなった深夜に作業を開始する。あたりは高級住宅街で騒音の苦情もすぐに入る地域なので、重機やエアポンプの使用は最小限にする。人力による手作業が主体となった。皆で力をあわせて、なんとか午前4時までには終わらせた。

新宿サンエービルの新築には当初から関わった。ゼネコンのもとにいくつもの下請け・孫請け業者が働いていた。すべてが経験豊富なベテランぞろいと思いきや、ベテランは下請け・孫請け業者のみ。現場監督は皆、今年大学を卒業して清水建設に入社したばかりの新人。会社では一番の新人でも、ゼネコンだから現場に入ったら、一番責任の重い現場監督に自動的になるらしい。自分の父親や祖父位の年配に指導・命令するのは大変だなと他人事ながらに感じた。

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