アイアンマン

プール

ブタの生体弁を入れている」と聞いて、なんとなくブタに見えて来た先輩は、水中を颯爽とウオーキングしている。水をかき分け、かき分け、となりのクロールよりも速い。水中ウオーキングの猛者である。そのあとを、おくれまいと2~3名がついて来る。まさにコバンザメのごとくピッタリとである。

よく見ると、その中の一人にはペースメーカーが入っているではないか。少しやせ型の引き締まった前胸部に、ペースメーカーの輪郭がくっきり浮き出ている。すごい、電池で動いているんだ。しかも感電せずに水中で。まさに水陸両用だ。

見とれていると「彼は私と同期でねえ」と、ブタの先輩がまた話出した。「彼はアイアンマンでねえ。北海道から石垣島まで、全国のトライアスロンを制覇したんですよ。そうだ、朝まで走るウルトラマラソンも完走したらしいですよ。」

「しかも彼は私と同じで、人工弁が入っているんですよ。そうだ、あっちは器械弁だったかな。それから、彼はあんたと同じで、夜はキカイで息してるよ。確か去年からだったかな。よく話すよ。詳しく聞いてみたら。キカイで息してる人は、もう一人いるんだけどねえ、今日は来てないなあ…」

ブタの先輩は、「私がCPAPを始めた」と聞いて心配してくれているのだ。そして手術痕が気になるのか、肌を見せない。ラッシュガード姿である。アイアンマンはパンツ1チョウ。しかし何度見ても、胸骨正中切開の手術痕がない!どこから心臓に器械弁を入れたのか?まさか間違って口から入れたのではあるまい。 ここでも、つじつまが合わない。今、政府が異次元の少子化対策とやらをやっているから、その影響で、こちらも異次元の話となってしまっているのか。

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