年金生活者ウエットスーツラッシュ

プライベートビーチ

眼が醒めると16:00だった。12時間ぶりに排尿もあった。急性腎不全は免れたようだ。でも背中が焼けるようにかゆい。かいても、かいてもかゆい。いったい何が起きているのか。まあ命が助かったんだから、細かいことは気にしないでおこうと思った。しかし後になって、これは重大な後遺症であることがわかった。

ウエットスーツラッシュである。塩分と水分が長時間皮膚に付着することで、肌の常在菌が過剰に反応し、バイオフィルムという肌を守るための粘性のある物質を分泌する。このバイオフィルムが汗腺を詰まらせて急激な免疫反応を起こす。それが、かゆみを伴う湿疹として急激に発症するのである。

これは、ひどいですねえ。発赤していて発疹が出来ています。一部くずれて来ています」後日、受診した皮膚科医の話である。それはひどいに決まっている。私はなんと24時間以上も、ズブ濡れのウエットスーツを着ていたんだから。ステロイド抗ヒスタミン軟膏、それにルパフィン(抗ヒスタミン剤)20mgが処方された。しかし全治するまで一週間以上かかった。

今回の遭難を機にスピアフィッシングから足を洗うことに決めた。これは遭難した夜に、あの死のプライベートビーチで荒れ狂う波音と上空のジェット音を聞きながら決めたことだ。すぐに実行に移した。不動産会社に連絡して、ベースキャンプを引き払った。もう二度とこの海に潜ることはないであろう。そして、クスリ漬け年金生活者は永年愛して来た海を捨てたサバイバーとしての結末だ。

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