この弓部置換をした心臓。一度は助かったのか。どれくらい持ったのであろうか。でもここに心臓があるということは、結局は死んだんだよな。手術場で心拍が戻らなくてもPCPS(補助人工心肺)をつけてICUに帰すから、オペ室では便宜上は亡くならない。あとはICUでPCPSが外せるかだ。患者の生命力しだいとなる。
大動脈から冠動脈の末端を自己血管でバイパスした心臓もある。それもシーケンシャルだ。どこから取ったのか。両腕からか。片足からか。内胸動脈を冠動脈末端にバイパスされた心臓もある。PCIが出来ない重症な狭心症か心筋梗塞がCABGとなる。ほとんどがオフポンプになったから生体への負担も大部軽減した。
おさない君の心臓もあったが本当に可哀そうだったよな。この状態では単心室か。世に出ることなく終わったのか。いや標本に手術の痕跡があるということは、いったんは世に出て、お母さんとおとうさんには抱かれたのだろう。両親の心労はたいへんなものだったと察する。
PAB(肺動脈バンディング)の跡のある小さな心臓もあった。バンディングしても改善がみられなかったのか。バンディングし過ぎたのか、不足だったのか。肺動脈の血流量をいかに調整するか、肺動脈をどれくらい糸で締め付けるかは小児心臓外科医の経験と力量にかかる。小児の心外は重責があるから術者のストレスも想像を絶する。さらに児の容態は予測出来ず急激に変化するのが常だからだ。
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