リフレッシュ工事 11

ベント

夕刻、バスターズは穴から這い出て来た。そしてなにもなかったように、涼しい顔をして車に乗り込んだ。作業がまだでよかった。もし真夏だったら… あの身動きすら難しい狭い空間で、一日中作業するなんて自殺行為だ。ゴーグル防毒マスクをつけて重武装、さらに有毒な青い薬剤を塗りたくる。

一般人なら熱中症ですぐに枯れてしまうだろう。やはりバスターズは凄いと実感した。地下スペースの奥まで、手抜きなく、白アリの侵入を防ぐ薬剤塗布していた。あの狭い空間に、大量の薬剤をどうやって運んだのか。人の手では無理だ。やはり高圧パイプ圧送したのか。

防蟻作業は想像していたより、たいへんな作業であることがわかった。この防蟻工事の単価は248,612円だった。高いのか安いのかわからない。そして最期の行程に移る。工事確認作業である。これは、工事依頼主が実際に足場に上がり、全行程が完璧に実施されていることを、確認して署名することである。

天候のいい日を選んで、現場監督がやって来た。手には新品のヘルメットを持っている。私のためのヘルメットだ。私の名前が刻んである。暗視野ゴーグル付きだ。これを被り、あごヒモをきつく締めあげる。鋼鉄製安全靴を履き、軍手をつける。いのち綱のハーネスをつけて、3階まで足場を登る。

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