危険度レベルⅤ

セイシンカ

危険度レベルⅤとはどの程度なんですか?」組になった先輩に聞く。「いちばん上のレベルらしい。俺もまだ3年目だから経験ないな」「でも見つけなくちゃな。地域住民危害を加える前にな」これはまずい。めちゃくちゃ正義感の強い先輩と組まされてしまった。患者は逃げたが、私はもう逃げられない。彼はいいとしても私の身が危ない。目の前が真っ暗闇になってしまった。そして「目の前に現れないでくれ」と願うばかりだった。

その割には熱心で、どういうわけか私も手を抜かない。彼以上に正義感が強いことに気づいた。車と徒歩で路地を見て歩き、不審な人影をみると追いかけて顔を確かめる。また、かたっぱしから、食堂、喫茶店、雀荘、貸ビデオ店など割り振られた通りの商店に入り、店主に不審な人物を見かけなかったか、聞いていく。

こんな警察まがいのことを、したことは初めてである。それに何の訓練も受けていない。ましてや丸腰である。ただ聞き取りの手法は、TV「太陽にほえろ!」で事前に学習していたことが役に立った。「太陽にほえろ!」は見るだけのものと思っていたが、まさか自分がすることになるとは想像もしていなかった。やはり、ここは限りなくファンタジーな世界だった。好きだった。

あとで知ったが、年に1回は非常招集がかかるという。ここは刑務所ではなくて病院だから、警備が手薄と考えるよりは、それだけ患者に優しい病院と、とらえるべきだろう。身体拘束が昨今問題となっているが、ここは最先端を行っていたわけだ。けど、そのたびに徹夜して患者を捜索するのも楽ではない。

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