年金生活者とクフ王のピラミッド

カメラもビデオも入口で回収。一日の人数制限がかけられている。いろいろと厳しい。なのに正式な入口などなく、ピラミッドを２～３段登ったところにある、盗掘された穴から中に入る。秋でも35℃近い灼熱の砂漠。真夏は40℃にもなるという。秋に行ったが、中に入ると熱気でムンムンしていて暑い。狭い通路を身をかがめて進む。立って歩けない高さなのである。

左は登る人、右は降りて来る人、それぞれ一列だけの幅。各国の観光客が入り乱れて、列をなして一列に続く。下は板張りである。まるでアリの行列。急勾配の上り坂。一度入ったら疲れても、休みたくても後ろがつかえているので最後まで登るしかない。あの高さのピラミッドまで一気に登るのは、体力がいる。換気が全くない空間だから、息も苦しい。

しかし皆ピラミッドパワーを信じて、黙々と登る。大回廊までたどり着くと、ようやくここから立って歩ける。だけど暗くて何も見えない。壁の蛍光灯が薄暗く照らす。80歳近い大先輩の年金生活者の女性も登ったが、後日気分を悪くして日本に帰れるかあやしくなり、帰途ドーハ空港のメディカルオフィスに、車いすで私が連れて行くはめになってしまった。彼女はエジプトの「命のカギ」を手に入れておいたおかげで、なんとか点滴治療後、日本に帰ることが出来た。

命がけでピラミッドパワーを信じて登る人々。登り切った先は一室。壊れかけた石棺が鎮座する。ほかには、何もないよ。本当はもっと上の階があるのだが、公開されていない。だけど、何か未知のパワーを感じる。太陽神ラーに由来するものか、世界最大のクフ王のピラミッドに登った感激からか。クスリ漬け年金生活者も生きている間に一度は登ってほしい。ツアー客の半分は、年金生活者だったから。