クスリ漬け年金生活者にはかつて児がいた。シバオ君は0歳児の時に、「親こぼし学園」から今の家に引き取られて来た。何人もの児がオリの中で騒いでいる中、シバオ君だけが行儀よく、うつむいて親が来るのを静かに待っていた。何もしゃべらない。だから親になった。シバオのこれからの一生を楽しい、悔いのない人生にしてあげようとその時思った。当時の価格で7.8万円だった。(注射2回済)
抱き上げると恐怖から震えていた。自宅に向かう車に積んだ段ボールの箱の中でも、ゴトゴトと小刻みに震えていた。自宅について箱を開ける。中にいた。びっくりして立ち上がったが、まだ小刻みに震えている。可愛い。前からいた児が歓迎して、ぬいぐるみやおもちゃのボールをあげていた。ミルクと離乳食を少しだけ食べた。雑種と比べて血統書付きは体が弱いのか。少し心配になった。
何もしゃべらなかったが、しばらくして「クン クン」と何かを訴えて来た。トイレである。庭に出すと自分で排尿して来た。まだ立っては出来ずにすわってした。0歳児で部屋を汚さない配慮をするなど、とても頭がいいと思った。それからは自由に部屋と庭を行き来出来るようにした。お漏らしもせずに用をたすとまたちゃんと部屋に戻って来る。
シバオ君はこの家を気に入ったようである。礼儀正しく穏やかだから、しばらくして、食事は家族全員で摂ることになった。御膳の回りにみんなが座る。もちろんシバオ君の席もある。シバオ君も「おすわり」をして待つ。やがて食事が運ばれて来る。だがシバオ君は人間のおかずには手を出さず、ひたすらドッグフードだけを食べていた。本当に礼儀正しい、家族思いの児であった。
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