猟銃と姨捨山

コキョウ

久しぶりに出社(社会に出ること)すると、周りは事件の話題で持ち切りだった。故郷と事件現場が近いことから、あらぬ所で、あらぬ疑いが持たれていた。「事件があったのは、あんたの部落かい?」「あんた今までどこ行ってただ?」ブタの先輩が代表して聞いて来た。

「とんでもございません。私の部落ではありません。となりの部落です」私の顔は引きつっていた。「そうかい。となりかい。だが、近けーやな。お宅んところは、やけに物騒なところやな。年寄りを山さ捨てたり、命粗末にしたりするんかい」「なんで一般人が銃なんか持っとるんかい?」さすが、もと県警本部長。職務質問の腕もまだまだ現役だ。というか、事情聴取されている。

「昔の風習で今は多分残っておりません。銃を持っているのは、クマが毎日家に来るもんで」と、私は確信はないが、つじつまが合うようになんとか答えた。実は私も猟銃の免許を持っているのだが、まだ県警本部長には知られていない。危なかった。知られていたら村八分にされていたかもしれない。そうしたら私も彼と同じ「独りぼっち…」 考えただけでも怖い。

備考)令和5年現在、クマが万一家に来ても、猟銃を使用することは出来ません。猟銃は許可された期間に、許可された区域(狩場)でしか使用出来ません。事前の届け出も必要です。まして民家での発砲など厳禁です。

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