「一日一杯のコーヒー代を節約するだけで、手に入れることが出来るんですよ」マニュアルではこう説明せよとあるが、果たしてそれで50万円もの商品が買えるのか?どういうからくりか。説明している私にもわからない。コーヒー代が仮に300円(当時の価格)として、月に300×31=9300円。月額約1万円とすると、完済するまでなんと50ヶ月もかかるではないか。
でも確かに50ヶ月で買える。要するに「月額1万円の返済でいいですよ。50ヶ月無利子ローンでいいですよ」ということだ。ものは考え方しだいだ。確かに一日一杯のコーヒー代を節約するだけで、英語力がマスター出来る。高いのか安いのかわからなくなって来た。しばらく沈黙が続いた。「買いませんか?」などとは絶対に口にするなと先輩に言われていたので、私も黙っていた。時間だけが過ぎた。
私はもう帰ろうと思い、広げたパンフレットをファイルにしまい始めた。すると小さい声で「これお願いします」耳を疑う言葉だった。こっちが慌ててしまうではないか。すぐ社に連絡を入れた。しばらくして頼りになるあの先輩が駆けつけてくれた。そして私のためにチャンスを逃さぬように、細かい詰めをしてくれた。
生年月日を見るなり、498,000円に価格を訂正した。20歳未満では50万円以上の契約は出来ないらしい。(当時の法律)そして帰り際に、突然厳しい顔つきになって「決心が揺らぐことはないですね。こちらも早速準備しますので」とドスの効いた声で念をおした。これはクーリングオフを回避するためだという。いろいろと勉強になった。
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