南から進入して来た何機もの陸上自衛隊多目的救難ヘリUH-1が、爆音をあげながら次々と校庭に着陸する。そのたびにグラウンドの土煙が激しく巻き上がる。土煙で視界が悪く同時に2機が着陸しては接触の危険があるため、他機は上空で待機している。1機ずつである。
北アルプス西穂高岳の山荘から、遺体をピストン輸送しているのである。機内から犠牲となった高校生の遺体が運び出され、校庭に並べられる。校庭のすみで待機していた父兄や職員が、ヘリの離陸を待ってワッと取り囲む。泣き崩れる父兄、教員、肩を抱き合う家族。真夏の校庭は異様な光景につつまれた。
付近の住民たちも集まり、高台になった道路からそれを見守っていた。大惨事となった西穂高岳落雷遭難事故。生徒11名が犠牲となった。ヘリ1機で1体を搬送する。だから何往復も何時間も続いた。いたたまれなかった。犠牲とならなくても、重軽症を負い病院に空輸された者も何名もいた。
毎年高校の恒例行事となっていた2泊3日の集団登山。心身を鍛え、教師と生徒の良好な人間関係をかたち作る伝統的な行事だった。それがこんなことに。クスリ漬け年金生活者は、まだ小学生であったが梅漬けの汁を多飲し酩酊状態に。でもそれは問題ではなかった。赤ら顔で、ふらつきながら石原商店を曲がり校庭へと向かった。
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