年金生活者と魔海

プライベートビーチ

約2時間が経過。その時はもう、取り返しのつかないことになっているとは、まだ気づいていなかった。そろそろ帰ろうとして湾の外を見ると、サンゴ礁に白波が立つほどの高波が押し寄せていた。これはまずい。3mはあるだろう。いつの間にこうなったんだろう。このビーチからは、いったん湾の外に出て泳がないことには帰れない。この高波の中をだ。焦った。

しかし今ちょうど満潮時刻の15:20である。だから今は無理だ。潮の引くのを待って、暗くなるギリギリ18:00にトライしようと決めた。約3時間、ビーチでその時を待った。持って来たソルティライチのドリンクは、この時点で残り1/3しかなかった。やがてその時が来た。だが思ったほど潮は引いていない。

でも今しかない。この時は、湾から出ても岩づたいに、つかまりながら行けばなんとか大丈夫だろうと思っていた。しかし魔海は年金生活者にそうはさせなかった。湾から出て50mくらい進み岩につかまっていたところで、大波が背中にぶつかった。「これはヤバイ!」岩の隙間や角を両手でつかみ、必死に耐えた。

ここから動けなくなった。戻れなかった。まして進めなかった。どうしようかと考えているヒマもなく、次の大波が今度は頭まで来た。視界が泡だらけになった。片手に持っていたスピアガンは、さっきの大波でとっくにほおり投げている。必死に両手で岩にしがみつく。1秒後には、頭を超えて岩に当り砕けた波が沖へ戻っていく。この力が想像を絶するほどの強烈な力だった。

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