092幽体 古河三菱地所へ

ブレイキング

092幽体とその一族は何度も汽車を乗り継いで品川を目指していた。といってもあてがあったわけではない。生き残っているかもしれない古い親戚と、軍人であった父のつてを頼りに心もとないだった。だが恵美子気丈に振る舞い、092幽体ら子らに不安を与えないようにしていた。そして1週間後ゴジラ-1.0破壊されつくしたばかりの東京に着いた。銀座街並みはすでにそこになかった。

東京は全てが破壊しつくされていた。ゴジラ-1.0なる未知生物相模湾に沈んだが、戦後日本はそれよりも、比べることも出来ない程、深く深く沈んでいた。-1.0どころではない。-100000000.0でも足りないくらいだ。喰うものがなく栄養失調で死んでいく人々。便所もないひどい衛生状態薬物細菌寄生虫汚染された。襲い来る感染症赤痢が全土に蔓延した。クスリなどないからどんどんと死んだ。そう考えると現代のクスリ漬け年金生活者は恵まれている。

破壊された鉄道橋の下には親のいない戦争孤児らがたむろする。食べるものがないから犯罪が続発した。ヒトは生き延びるためには何でもする。詐欺から窃盗傷害暴行殺人と、あらゆる犯罪が繰り返された。取り締まる警察などいない。生き地獄そのものだった。米軍から横流しを受けた闇屋だけが暗躍する。

物々交換してなんとかを手に入れることが出来たら幸運だ。それすら出来ない日々がつづく。交換する物も底をつく。家具を売り、刃物を売り、を売り、を売り、かつらを売り、金歯を売り、ふとんを売り、そしてもう売るものがなくなると、みな死んでいった。そんな中092幽体は幸運にも、父、の昔の友人のつてを頼り、古河にたどり着くことが出来たのである。そして三菱地所疎開あとの建物居場所となった。

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