リマから400キロは走ったか。あたりは荒涼とした乾燥大地にかわる。大型トレーラーが土煙を上げてすれ違う。遠くに小高い丘が見えるが、それ以外何も存在しない。緑はない。木々も草もない。砂漠のような大地。その一角に小型機専用の飛行場がポツンとある。空からでないと地上絵の全景は見ることが出来ないからだ。ここにも全世界から年金生活者が殺到する。古代のロマンをもとめて。
小型機は不安定だから、なんと搭乗前に体重測定がある。ここではセキュリティーチェックよりも体重チェックが厳重だ。重量制限と超過運賃が出るらしい。もちろん横綱級は倍料金。150キロ近い米国人の年金生活者がひっかかっていた。座席指定も左右のバランスを考慮する。なんと同じ機にその横綱も乗っていた。ちなみに航空会社は「シニーク」。いい名前だが日本人だけは恐怖する。「死に行く」
順番待ちが長蛇の列だから重量オーバーでも満席で飛ぶ。はたして今日は離陸出来るのか。よく落ちるらしい。なんとか滑走路ギリギリで離陸出来た。危なかった。運転席と客席はオープン。だから操縦桿を力いっぱい引いて、わめいているパイロットの声が筒抜けだ。日本語に訳すと「なんだこんなに乗せあがって。重くて上がらないぞ。しもうた。もう滑走路がない」 なんか経営者側の圧力がすごいみたいだ。北海道のKAZU-1みたいに、安全は二の次のようだ。
上空まで来ると安堵したのか、なんと今度はパイロットが黄色いインカコーラの栓を開けた。そしてうまそうに飲み始めた。ゲップの音とともに甘い香りがここまで漂って来る。パイロットはベテランなのか、まさかの片手運転。安全二の次は社風のようだ。それで機体を左右に大きく傾けて、地上すれすれに飛び、地上絵に近づいて窓いっぱいに見せてくれる。サービス精神旺盛だ。感謝する。パイロットは4つの言語をあやつり、それぞれの地上絵の説明をしてくれた。それでインカコーラが必要だったのか。納得した。
コメント