先頭から遅れをとってしもうた。「早く、早く」とせかされるが、人工股関節のクスリ漬け年金生活者と、足を引きづるバニラ爺では速度が出ない。転倒して骨折でもしたらたいへんだ。ブラジルでは人工股関節の骨折には対応出来ない。あぶない。異国の地で寝たきりになる。
ゆっくりと慎重に進むしか道はない。それでも、やがて最後尾のおばあちゃん教授が視界に入った。「暑い、暑い」と体を左右に振らしながら、汗だくの顔がひきつっている。先頭集団から遅れを取っていたのだ。歩くこと30分余。待っていた仲間たちに合流出来た。現地ガイドが、なんとか切符を手に入れてくれていた。
トロッコ電車のホームは人で溢れている。押されて線路に落ちる人も後を絶たない。何本か待ってやっと「悪魔の喉笛」行きのトロッコに乗り込んだ。初冬の涼しい風が心地よい。早足くらいのスピードだ。天候は快晴。15分くらいで終点だ。ここから桟橋を20分歩くと、悪魔の喉笛である。
桟橋は世界中の観光客で身動きが取れない、前に進まない。20分では着かないぞ。バニラ爺は諦めて、足をひきづり、ひきづり戻って行った。約30分もすると桟橋のUターンに到達した。「悪魔の喉笛」が眼前にあった。轟音で何もかも吸い込まれる。音も吸い込まれて聞こえない。やはり世界一の地上のブラックホールだった。
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