ウミ

年金生活者とヤス

これ程、楽しくて生産的な趣味はない。趣味に費やした費用もちゃーんと回収することが出来る。なにせ趣味そのものが収入の糧となるからだ。私は、隣町のビーチでヤスを片手に魚突きに興じるようになった。遠浅のビーチで大潮の干潮を狙う。潮が引き、遠くのリ...
ウミ

年金生活者と趣味

年金生活者は趣味を持たないと生きていけない。これが現実だ。どんなに金がなくても。特にクスリ漬け年金生活者においては必須である。実社会から隔別され、人間関係も絶たれ、病魔に独り苦しむ。だから日々、死の恐怖に怯え、不安を訴えることも出来ずに、こ...
セイシンカ

闇夜の巡視

閉鎖病棟の夜勤はこの世とは別世界。ある事件が起こった。患者が睡眠中に顔を足で押しつぶされて瀕死の重傷を負ったのだ。1時間ごとの巡視では防げない。スタッフはただ詰所の中にいたのでは、病棟の奥で起こったことはわからない。近くで目撃した患者の通報...
セイシンカ

ウチュウジン保護

いつまでみんなで飛び跳ねていればいいのか。これも仕事か?時間外の超勤を書いてもいいのか?足も痛くなって来た。15分。20分。やっと車から白衣の職員が降りて来た。病棟の大先輩が2名来てくれたのだ。そして徳畑君は抵抗することなく、地球人に連れら...
セイシンカ

ウチュウジンの来訪

彼の世界に入ると、地球人の言語は理解出来ない。そもそも、言語というもの自体存在しない。ただ口をパクパクさせているだけで、地球人同士コンタクトがとれるようだ。全く音声のない世界なので、テレパシーで会話しているとしか思えない。無音の世界なので、...
セイシンカ

第2ウチュウジン

徳畑君24歳。浅黒く陽に焼けた風貌で筋肉質な好青年である。頭も良くすばしっこい。スタッフのすきをついてはよくエスケープを繰り返していた。彼には、いつからか私が宇宙人に見えるらしい。いつも私を指さして、笑いながら奇声をあげる。何を言っているの...
セイシンカ

保護・収容

やがて夜は更けて店の灯りがポツン、ポツンと消えていく。人通りがなくなる。午前零時を回ったころ、定期的に公衆電話で本部と連絡を取っていた先輩が、「自宅近くの喫茶店にいるらしい」との情報を持って来た。すぐに向かう。現場まで10分だ。喫茶店に着く...
セイシンカ

危険度レベルⅤ

「危険度レベルⅤとはどの程度なんですか?」組になった先輩に聞く。「いちばん上のレベルらしい。俺もまだ3年目だから経験ないな」「でも見つけなくちゃな。地域住民に危害を加える前にな」これはまずい。めちゃくちゃ正義感の強い先輩と組まされてしまった...
セイシンカ

非常招集

非常招集がかかった。病棟に緊張が走る。週休、年休おかまいなしに全員が招集される。明けのスタッフは仮眠後、病棟に出勤するよう指示が出される。措置入院したばかりの男性患者のエスケイプ(逃亡)だ。夕食のコンテナを運び入れる際、女子スタッフを押しの...
セイシンカ

食べられたヤギ

毎年秋になると5匹いたヤギがなぜか4匹に減る。収容者の一人がそれに気づいていた。彼は60代前半の男で15年近く入院している。そして朝、昼、夕と必ずヤギ小屋まで行き、何匹いるか声に出して数えているのだ。15年間一日も欠かさずに。そして毎年、病...