クラウンが燃えた日

コキョウ

ある晩クラウンが燃えたらしい。警察から小学校長連絡が入った。それで朝から職員室が騒がしいのか。「こころ当たりのある者は名乗り出なさい。」担任の先生が学活の時間に話した。みんなキョトンとしている。ただ、クスリ漬け年金生活者のこころは、にわかに騒がしくなった。

ちがうクラスの仲間数名も同じ心境だった。示し合わせたように放課後、クラウンの置いてある県営団地の公園に行ってみる。真っ黒こげになったクラウン惨めな姿をさらしている。警察消防現場検証をしたのか、規制線が張ってあり近づけない。なんということか。そういえば車内にマッチがあったなあ。

毎晩仲間クラウンで遊んでいたのだ。エンジンこそかからないが、あとは本物の車ハンドルを回し、ラジオを聞きドライブ気分を楽しんだ。エンジンルームも開けることが出来た。やがて、町内児童会長の息子から情報が入った。警察が該当者宅を訪問して、事情聴取しているという。

仲間たちは皆蒼くなった。自分たちのグループにはまだ捜査の手が回っていないが、別グループのメンバー宅は警察ガサ入れにあったという。まずい。今日は我が身か。それからしばらく隠遁生活が始まった。自宅に帰ると玄関から靴を持って押し入れに隠れる。家人には「まだ帰って来ない」と、口裏を合わせてもらう日々が続いた。

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