092幽体 舞鶴まで翔べず

ブレイキング

そして大波頂上に船が来たら、今度は船首が急にを向く。そのままでは船は大波滑り落ち海中に船首から突っ込む。即沈没だ。だから今度は全速力後退する。スクリュー全力逆回転させて、できうる限り速度を落とすのだ。舞鶴までの航海予定2週間。この間この操縦永遠に続くのか。そしてこの間、便意我慢し続けるのか。定員オーバー喫水線よりも大きく沈んだ船では重たくて、いくら船長石丸寛治でも操れない。便意我慢していればなおさらだ。

それよりも燃料がもたない。大波が来るたびに、エンジン全開前進後退を繰り返していたら進みたくても進めない。それよりも便意限界だ。どちらもとても舞鶴まではもたなかった。必死で受け入れてくれるを探した。もちろん普通のではだめだ。多数引揚げ者乗船させている。検疫収容施設が整った港だ。そして船はついに暴風雨の中、仙崎港の沖に姿を現した。

2時間大波の来ないタイミングを待った後、船長石丸寛治操る船は、嵐の中なんとか引揚げ桟橋接岸した。接岸直前、予期せぬ大波で船体が大きく一度揺れて桟橋と接触し、桟橋が一か所だけクッションのタイヤもろとももげてしまった。「まあ一か所だけだからよしとするか。飛び越えられないこともないし。船長石丸寛治無事役目を果たしたことに、ほっとをなでおろした。

そして何時間もかけて引揚げ者下船検疫が行われた。船長石丸寛治何時間便所から出て来なかった。奇跡的092幽体家族もろとも無事だった。ところがは取りとめたものの、持ってきた行李がない。全財産が入った行李だ。どこを探しても見つからない。下船検疫混雑の合い間に何者かに盗まれてしまったのだ。092幽体家族絶望に暮れた。そして引揚げ者寄宿舎のような建物に収容された。

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